宅建士とは
宅建士は、土地・建物等の不動産の売却や購入のための実務を扱う、不動産取引の法律専門資格です。
とくに不動産業界で重宝され、不動産事務所では1/5以上の割合で宅建士を雇う必要があり、需要があります。宅建士になると、不動産の売買や賃貸物件の契約時において、宅建士にしかできない独占業務ができるようになります。
また、宅建士としての独占業務以外にも、法律の専門家として法律係のキャリア形成や、不動産はローン契約の担保となるため、宅建士の資格を生かして金融業界等で活躍するキャリアもあります。
宅建士の独占業務
重要事項の説明
宅地建物取引は、不動産という高額かつ重要な資産を扱うため、借主・買主に向けて最低限の重要な情報を事前に報告する義務があります。簡単に言うと、大事なことを聞いてなく借主・買主が損害を被った、ということをなくすことが求められるということです。宅建業法においては、この最低限の重要な情報を「重要事項」と言い、この重要事項は必ず宅建士から伝達することが法律で定められております。
重要事項説明書への記名
重要事項の説明は口頭で行うだけでは足りず、後日言った言わないのトラブルが生じた場合や、裁判等において説明義務を果たしたことを証明するために、法律で定められた重要事項を説明することが求められます。この書面を「重要事項説明書(35条書面)」といいます。この書面により、不動産取引の妥当性が証明されます。この書面を法的に有効なものにする要件として、宅建士の記名が求められています。
37条書面(契約書)への記名、押印
決済方法や引き渡し時期などを記した契約書面への記名も、不動産取引が成立したことを示す書類として宅建士が記名し、売主(貸主)・買主(借主)に交付する必要があります。
宅建士を取得するメリット、活かせる仕事
宅建士は先に説明した独占業務がありますが、独占業務だけを行う仕事ではありません(独占業務だけだったら、少し地味ですし、そこまで人気は出ないと思います。)。不動産取引の専門家、法律専門家として幅広い活躍の場が存在します。それゆえ、非常に人気の法律資格であり、2023年の宅建士試験においては、23万人もの受験者が受験しております。
宅建士を取得するメリット
①就職活動や転職活動に有利
宅建士は身近な法律家として、日本でトップクラスの大人気資格であり、その知名度は非常に高く、自身の法律知識を客観的に証明できます。宅建士の資格を履歴書や職務経歴書に書けることのメリットは非常に大きいです。安定の資格であり、企業の採用担当者の目に留まる可能性が非常に高いといえます。
②活かせる仕事の幅が広がり、キャリアアップにつながる
宅建士の試験範囲は、民法等・宅建業法・法令上の制限・その他関連知識からなります。宅地建物取引の専門分野も含まれますが、法律の基礎である民法や税金制度等、一般的で汎用性の高い分野も含まれております。特に民法を学習できることから、法律のリテラシーが身に付きます。法律知識は、法律専門家だけに求められる能力ではなく、ビジネスマンとして一定のスキルは当然身に着けておくべき領域です。そのため宅建士は不動産取引という特定の領域のみで利用できるものではなく、幅広いキャリア形成を支援してくれる資格です。
③収入アップにつながる
宅建士は、独立やフリーランスで仕事をすることも可能ですが、不動産取引という性質上、大手資本が介入するケースが多く、どちらかというと企業内で活かす資格です。
そのため、「宅建士の資格を取得したら年収がいくらになる」みたいな客観的な水準はなく、勤め先企業の報酬体系によります。ただし、不動産事務所においては1/5以上の割合で宅建士が必要であったり、法律知識を活かして企業内でキャリアを広げることができる等、企業側のニーズが高い領域で資格を活かすことができ、年収アップは確実に期待できます。また、企業によっては数万円の資格手当がつくことも多いです。
宅建士を活かせる仕事
①不動産業界
不動産業界で活かせるというのは当たり前すぎますが、単に不動産業界といっても様々な仕事があります。例えば次のような仕事があり、不動産業界とは非常に広い概念で、不動産業界の中にもさらに様々な仕事が存在します。
・不動産開発や建設事業:大手ゼネコン、不動産デベロッパー、ハウスメーカー等の土地開発や建築を行う事業。
・不動産販売代理店・仲介業者:建築会社が建築した不動産の販売代理店や、賃貸不動産の仲介代理店等。販売や仲介の対象となる不動産は、居住用・事業用・投資用等様々である。
・不動産管理事業:不動産物件の維持管理・清掃・テナントへの地代家賃の回収業務等、不動産を維持、運用するための管理業務を引き受ける会社。
・投資やコンサルティング業務:不動産投資という言葉があるように、不動産は投資対象です。開発や購入に膨大なコストを要しており、効率的な投資回収が求められます。効率的に運用すれば、安定的なリターンや節税効果のメリットを享受することができます。このように、不動産投資として効率的な運用を検討する等、アドバイザリー系の業務も不動産業界に含まれます。
②金融業界
銀行や証券会社等金融業界に属する会社は数多存在しますが、主に、融資を行っている銀行や、信用金庫でのニーズが高いです。メガバンクへの就職はややハードルが高いですが、地方銀行や地方信用金庫まで含めれば、金融機関の数はかなり多く、それゆえ宅建士を活かせる企業数自体も多いです。
融資を行っている場合、融資の担保に借主が保有する不動産を取ることになり、金融機関と不動産は密接に関連しています。
③保険業界
保険は、顧客のライフプランニングを考え、顧客に沿った形の保険商品を販売します。その際、例えば、マイホームを所持済みなのか、それとも何歳までに購入する予定か等、個々の人物のライフプランニングを踏まえて、どのタイミングでお金がどの程度必要になるかを検討します。このような分野はファイナンシャル・プランナーの得意な領域ですが、ファイナンシャルプランニングをするにあたっては、マイホーム等不動産関連の話と紐づくことが多く、ファイナンシャルプランナーの資格に加えて宅建士の資格を保有している方の割合も多く、保険と宅建士は関連性が高いものとなります。
宅建士試験の試験制度概要、合格率や難易度
試験制度の概要
| 受験資格 | 受験資格なし |
| 試験日 | 毎年10月第3日曜日 |
| 合格発表日 | 毎年11月下旬ごろ |
| 試験形式 | マークシート方式 |
| 受験料 | 8,200円(非課税) |
| 試験範囲 | 民法等(14問) |
| 宅建業法(20問) | |
| 法令上の制限(8問) | |
| その他関連知識(8問) | |
| 合格基準点 | 35点前後(毎年変動) |
試験範囲の内容(民法等、宅建業法、法令上の制限、その他関連知識)
| 民法等 | 全ての取引の基礎である民法について、権利関係等について主に問われます。民法の条文は膨大な量になりますが、宅建士試験で出題される内容は基礎的内容です。その他、権利関係について、借地借家法、不動産登記法、区分所有法等について問われます。 |
| 宅建業法 | 宅建業法とは、宅地・建物に関する取引を公正に行い、消費者を守るための法律です。消費者保護の観点から、重要事項説明、クーリングオフ制度等の宅建業法に関する法制度の知識が問われます。 |
| 法令上の制限 | 宅地・建物に関する取引には、国土利用計画法、都市計画法、建築基準法、土地区画整理法、宅地造成等規制法など様々な法規制が存在します。民法や宅建業法等主要法令に加えて、当該法律規制について問われます。 |
| その他関連知識 | 固定資産座税、相続税等不動産取引に係る税制や、その他(土地の形質・地積・地目・種別や建物の形質・構造・種別等)が問われます。 |
過去10年間の試験結果概要(受験者、合格者、合格率)
✓合格率は15~17%程度の水準
✓合格ラインは35/50点前後の水準であるが、37~38点あれば安全圏
✓令和5年度は23万人の受験者規模
| 年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | 合格点 |
| 令和5年度 (10月実施) | 233,276 | 40,025 | 17.2 | 36 |
| 令和4年度 (10月実施) | 226,048 | 38,525 | 17.0 | 36 |
| 令和3年度 (12月実施) | 24,965 | 3,892 | 15.6 | 34 |
| 令和3年度 (10月実施) | 209,749 | 37,579 | 17.9 | 34 |
| 令和2年度 (12月実施) | 35,261 | 4,610 | 13.1 | 36 |
| 令和2年度 (10月実施) | 168,989 | 29,728 | 17.6 | 38 |
| 令和元年度 | 220,797 | 37,481 | 17.0 | 35 |
| 平成30年度 | 213,993 | 33,360 | 15.6 | 37 |
| 平成29年度 | 209,354 | 32,644 | 15.6 | 35 |
| 平成28年度 | 198,463 | 30,589 | 15.4 | 35 |
| 平成27年度 | 194,926 | 30,028 | 15.4 | 31 |
| 平成26年度 | 192,029 | 33,670 | 17.5 | 32 |
※令和2年及び令和3年度はコロナウイルスの影響で2回に分けて試験を実施
宅建士の難易度、勉強時間は?
難易度:
宅建士の難易度は資格試験の中では平均的なレベルといえるでしょう。
合格率は15~17%程度となっており、比較的低い水準ではありますが、受験者全員が十分に勉強をして試験に臨んでいるわけではありません。そのため、周りの受験者を意識せず、自力で合格点を取るための努力をしましょう。正しく努力をすれば必ず合格できる試験となっております。合格点を取ることだけにフォーカスすれば、合格率は関係ありません。
なお、宅建士の受験勉強に係る勉強時間は、あくまで目安ですが、400時間~500時間が一般的なラインとされています。勉強を始める方は、このくらいの勉強時間を目安に、試験日から逆算して、一日や週の勉強時間を決めておくとよいでしょう。
宅建士の勉強方法
宅建士の資格は、専門学校やオンラインスクール又は、独学で取得することができます。
結論としては、専門学校やオンラインスクールで学習した方が良いと考えられますが、今の時代、充実した参考書やYouTube等の情報発信も存在し、独学でも十分に合格できる試験です。
①専門学校又はオンラインスクール
メリット:プロの専門講師による解説により、効率的な学習が可能である点がメリットです。法律分野は体系的に趣旨を理解しながら学習を進めていくことで、正確な知識ができあがります。この点、プロの講師による解説により理解度が大きく広がります。また、試験範囲が広いものの、試験に出題される分野はある程度限られており、重要度に応じた効率的な学習が可能です。
デメリット:コストが平均で10万円~20万円程度かかるという点がデメリットとしてあげられます。ただし、本気で合格を目指すのであればお金をかける価値はあるし、最近では大手予備校以外にも、低コストで受講できるオンライン専門スクールが台頭してきており、コストもある程度抑えることができます。
②独学
メリット:学習に係るコストは、参考書代・模擬試験代・受験費用等くらいであり、本当に低コストで学習することができます。大学や、他の資格で法律の勉強をされていた方であれば、コスパを重視して独学で合格を目指すのもよいでしょう。
デメリット:知識を体系的にインプットしにくく、ただの暗記作業になってしまう可能性がある点や、試験における重要度が低い分野まで深堀してしまい、合格まで遠回りになる可能性があります。
まとめ
宅建士を取得することで、不動産業界をはじめとして様々な業界でのキャリアが広がります。
知名度も非常に高く、自身の客観的な価値証明にもなります。
また、法律の基礎知識を身に着けることができ、法律のリテラシーが向上します。
興味ある方は是非学習してみてください。


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